黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~

俺は瑠衣と共に駅舎に駆け込み、周囲を見渡した。悪霊を引き連れているため、目指す女性はすぐに見付かる。

「上り線みたいね。どうする?」
「もちろん、追い掛ける」

適当な料金の切符を2枚買い、1枚を瑠衣に渡す。情報がなければどうする事も出来ないので、とりあえず尾行する。

3分も経たないうちに、上り電車がホームになだれ込んできた。女性が乗り込む姿を確認し、同じ車両に飛び乗る。


ようやく落ち着いて、対象の女性を眺める事が出来た。

見た感じ、女性の年齢は20代半ばといったところだろう。俯き気味で、覇気が全く感じられない。清潔感ある服装や持ち物からすると、これから出勤するのだろう。

しかし──


横を見ると、瑠衣もどこか納得いかない表情をしている。たぶん、俺と同じ事を考えている。

なぜ、あの悪霊は人に憑いているのか?

そもそも、悪霊は地縛霊だ。特殊な条件を満たさない限り、その場所を離れることは出来ない。それなのに、あの悪霊は女性に取り憑いている。

なぜだ?

 


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