黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
そこには、明るい栗色の髪をサラサラと風に靡かせながら、1人の少女が立っていた。夏休みだというのに、なぜか制服姿。この辺りでは滅多に見掛けない特徴的な制服は、隣の市にある県内屈指のお嬢様学校のものだ。
「あれが見えてるんだ」
彼女はぶっきらぼうに、全く同じセリフを吐く。
ここでようやく、脳ミソが動き始めた。
「あーもー、あの人影が見えてるのかって聞いてるんでしょ!!」
返事をしない俺の態度に苛立ったのか、少女の声が極端に大きくなる。反射的に首を縦に振った。
少女は腕を組み、ウンウンと満足げに頷いている。
知り合い・・・ではない。
よく見ると、せっかく有名な学校の制服なのに、シンボルであるはずの赤いネクタイはなく、白いブラウスの胸元を第2ボタンまで外している。いや、そもそも何で制服姿なんだろう?
そこまで思いが至って、ようやく彼女が口にした言葉を理解した。
「見えてる」のか?
もしかして、彼女にも見えてるのか?
彼女の顔を凝視したまま止まったことが気に障ったらしく、逆に目を細くして睨み返してくる。本当にあの有名な聖徳女学院の生徒だろうか?