黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
ここまでは、ごく普通の展開だ。
ありふれたコイバナ。
「ホント、よくある話よ。
いつまでも夢を追う、良く言えばピーターパン。悪く言えばお子様。そんな彼氏を全面的にバックアップする、しっかり者の彼女。マキは、その典型。
でも、本当に幸せそうだった。
売れようが、売れまいが、有名になろうが、なるまいが、2人にとってはそんなに重要な事ではなかったのかも知れない。
そんな穏やかな日々が1年近く続いたあの日、6月15日の夜・・・
その日は雨が降っていて、笠原君は駅前ではなく道路向こうにある商店街のアーケードで歌っていた。マキはいつもの様に、仕事帰りにその路上ライブを聴きに行った。
いつもと変わらないライブ。
いつもと変わらないマキ。
いつもと変わらない1日が終わり、いつもと変わらず駅前の信号で2人は別れた。
横断歩道を渡りながら手を振る笠原君を、駅に向かうマキは笑顔で見送る・・・
その時だった──
マキの目の前で、信号無視をして突っ込んできた大型トラックに笠原君がはね飛ばされた。そして、そのトラックは停車することなく、道に転がった笠原君を踏み潰し、300メートル以上引き摺ってようやく停止した。
当然、即死。しかも、大型トラックに300メートル以上も引き摺られ、笠原君は判別出来ない程にバラバラになっていた・・・」