黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
「マキさん・・・
もうすぐ、笠原さんは自我を失い、完全な悪霊になります。
あなたの未練が、笠原さんを縛り付けているんです。
あなたが、笠原さんを悪霊にしてしまっているんです」
マキさんの視線がこちらに移る。
「いいんですか?」
固まっていた表情が崩れ、吊り上っていたマキさんの眉が落ちる。
認めたくはないだろう。
でも──
自分の我がままの為に堕ちていく最愛の人がいれば、もう答えを出すしかない。ずっと分かっていたハズの答えを。
その時、声が聞こえてきた。
いや、聞こえるというよりは、空気の振動が言葉に変換されたかの様な・・・
「・・・殺シタクナイ。
俺ハ、マキヲ殺シタクナインダ」
「ヒ・・・ヒロ君?」
「オ願イダ。
俺ニマキヲ殺サセナイデクレ。
マキニハ幸セニナッテ欲シインダ」
「でも、私の幸せはヒロ君としか・・・そこにしかないから」
「マキハ生キロ。
俺ハイツカ思イ出ニナルカラ・・・
マキハ未来ヲ──」
空気が変わった。
濃密な殺意が充満し、背筋を物凄い勢いで悪寒が走る。