黄泉送り ~3人の悪霊と1つの願い~
◆黄泉送り

ここ?

「ここ」とは何処だ。
ここ・・・ああ、市橋神社か!!


俺は立ち上がると、小走りで出口に向かう。
「ま、雅治!?」
瑠衣が慌てて俺の後について来る。

もう他の事は考えらない。
幸いにも、ここは市橋神社のすぐ近くだ。走って行けば5分もかからず到着する。

「待って!!」
走って来た瑠衣に、エレベーターで追い付かれた。

無言で瑠衣の方を向く。
「雅治、あんた覚悟は出来てるの?」
意味が分からない。
「覚悟は出来てるのかって聞いてるの!!」
「何のだよ?」

エレベーターが1階に到着し、スッとドアが開く。
俺は答えも聞かず、道路に飛び出した。
暗闇に市橋神社の境内が、ボンヤリと見える。
俺は全力で走り始めた。


果穂は俺の全てだった。
いや、俺の全てだ。
早く会いたい。
早く、少しでも早く会いたい。


5分も経たず石段まで辿りつき、そのままの勢いで一気に駆け登る。

徐々に大きくなる鳥居。
荒い呼吸音が、深々とした闇に沈む。
長い石段を登り切った足は小刻みに震え、膝から下の感覚が遠くなっていく。


境内には漆黒の闇が溢れていた。





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