君と金魚、夜
「そんな面白い顔すんなよ、今日はもういい。俺は鈴波海志だから覚えといてね」
「鈴波…」
鈴波海志。
あたしはその名前を繰り返した。
「えっ、鈴波?鈴波って言いました?」
「じゃあまた」
「待ってください、いろいろ分からないです!」
そうあたしが言った時、もう海先輩はあたしの見えないところにいた。
でも海先輩の名字が鈴波ってことだけは覚えている。
そういえば洸人さん、弟が同じ高校にいるって。
あたしはあり得ないと思いながら、海先輩のことを考えていた。