君と金魚、夜
車の中では今時っぽいロックバンドの曲が流れていた。
「あれ…煙草の匂いしない」
「え?なんで俺が煙草吸うって知ってんの?」
「洸人さんが倒れたとき煙草吸ってたじゃないですか」
「そっか。そりゃあ女子高生車に乗せるんだから気遣うよ」
「あたし煙草吸わない人がいいです」
「水希がそういうなら禁煙しようかな、まぁお前の前じゃ絶対に吸わないけどさ」
「どうしてですか?」
「嫌われたくないから」
嫌われたくないから、にドキッてする。
あたしのことをどう思っているんだろう。
「どこ行く?この時間に行けるとこってそんなに無いけど、しかも人通りの多いところは危ないし」
「どこでもいいですよ」
「それが一番難しいんだよな…とりあえず走るね?」
そう言って洸人さんの車があたしの家から遠ざかって行った。