君と金魚、夜
「俺が継ぐって言った瞬間から親は元気になった、弟は相変わらずだけどさ」
「じゃあ今は平和ですね」
「うん、安定はしてる」
あたしが聞きたかったのは女の人のことだったけど、洸人さんのことが少しでも知れて嬉しいと思った。
「こんなこと水希に言うつもりなかったんだけど、言っとかなきゃ余計に話がわからなくなるから言った」
「聞けてよかったです」
「俺には婚約者がいる」
「えっ」
婚約者。
結婚を約束している者。
「4年後、28歳になったら結婚させられる婚約者がいる、それが水希が見た女の人だと思う」
「結婚するんですか?」
「親が決めた相手で、しかもその人投資会社の娘さんだから俺に拒否権なくて」
結婚するんですか?っていう質問には答えてくれない。
「その女の人は俺のこと本気で好きらしい、そういうの自惚れじゃないけど分かる」