君と金魚、夜
よく分からなくなっていた。
あたしの目の前の人は、あたしの目の前のあたしの好きな人は今なんて言った?
ただ好きって聞こえた気がして。
心臓は動いているけど止まっている。
波は押したり引いたりしてるのに、あたしと洸人さんの周りだけ何もないみたい。
「あ、えっと」
好きな人から告白される、っていうのは初めてだった。
今のあたしならあたしが告白した時の洸人さんみたいになかったことに仕返したりできるけど、その時は何も考えられなかった。
「人違いじゃなくて…あたしですか?」
「水希」
「じゃあなんでこの前…」
「俺から言いたくて、それもきちんと片付けたかったから。聞こえないふりしてごめん。水希の思いから逃げるようなことして」