君と金魚、夜
あたしは電話を切った。
「向こうの女の子の声すごい聞こえたんだけどさ、水希今日誕生日?」
「そうですよ」
「マジで?早く言えよ、俺今日何にも用意してないし」
「いらないです。ていうか今まで私も忘れてたし」
「産まれた日は大切にしろよ」
「はい」
気を取り直して、なんて行かずにあたし達はゆっくり帰ることにした。
途中で貝殻を拾ったりしながら緩い時間を過ごした。
初めて出会った時とも、2回目とも、今日の朝とも違う空気をあたしは吸っている気分だった。
まだ付き合う、って言えるわけじゃない。
でも確実に、距離は縮まっているのは分かる。