君と金魚、夜
洸人さんの声が寂しげだった。
「海志は昔は頭も良くて真っ直ぐなやつだったんだけど会社は長男しか継げないってわかった途端に荒れたんだ」
「……」
「この前こういう話したよな?ごめん何も進んでない」
「そんなっ焦ることはないです。まだあたしだって立派なわけじゃないし」
洸人さんとは付き合いたいって思うようになったけど、急かせばいいことじゃないとは分かっている。
「海志に何にもされてない?あいつよく俺に近づいてくる女を狙うから」
「近づいてくる女がいっぱいいるんですね…」
「そりゃあな、海志はよくそういう女をひっかけては落とすから近づいて欲しくないな」
洸人さんが少し嫉妬してるみたいだった。
「あたしは大丈夫です」
「本当何にもされてない?」
あたしの頭をよぎったのはおでこにキス。