君と金魚、夜
落下寸前
「…ん…」
「おはよう」
知らない間に寝ていたらしい。
目の前の人は平常心を取り戻している。
「えっ、今何時っ」
「夕方の5時、俺も寝てた」
はっきりと意識のある男の人はさっきまでと違って弱っていない。
「立てる?」
手を差し伸べてくれる。
その手を無視する。
「立てますよ」
そう言って立とうとする。
「あっ」
コロン。
膝にペットボトルが乗っていたらしく、落ちた。
そしてスカートからは水滴が溢れている。
「これ俺にくれた…このスカートはさすがに駄目だよな…」
「家帰ってたら乾きますよ、夏だし」
「風邪引くだろ?」
「スカートだけじゃ引きませんよ」
「いや…年上として悪い」
あたしを見て言う。
きっと礼儀のある人。