君と金魚、夜
連れて行かれたのは非常階段だった。
ずっと無言で手を引っ張られていた。
「海先輩…話って何ですか?てかあたしの名前…」
「西森水希」
「はい…」
「好きだ、俺と付き合おう」
「えっ?」
あたしは耳を疑う。
告白をされるのも何年ぶりだし、まずこんなにかっこいい人になんて。
「ねえ返事は?」
「いや…えっと」
ここで頭を過るのは洸人さんの顔だった。
でもこの距離の海先輩によって掻き消されてしまいそう。
海先輩は左手で壁に寄りかかるようにして、あたしを取り囲んでいる。
「まぁいいや、早く決めて欲しい」