この未来を壊して下さい。【完】
「そう、跡取りねぇ~」
「あら、今頃怖くなったの?」
さっきまでアタフタ状態だった佐野が急に強気になった。
佐野グループのお偉いさんには、何もできないとでも思った?
「怖くなるわけないじゃない。
余計に楽しくなってきたわ。」
自然に口角が上がる。さっきまでしていた嘘の笑みではなく、本当に自然に。
周りの人からは“黒い笑み”って言われるけど関係ない。
仕方ないでしょ。楽しいんだから。
この状況が。自分の未来は安定していて、誰も逆らえないと思っている人の未来を壊すのが。
嫌いなのよ、何不自由なく暮らせると思っている人間が。