この未来を壊して下さい。【完】
「姫羅、来年もまた一緒に見ようね」
そう私にしか聞こえないように言ってベランダに向かう美穂はきっと今、私が何を考えていたのかわかったんだろう。
これが、今年が、最後になるかもしれないということを。
No.1の跡取り。常に命が狙われる環境でこんな風にのんびり花火を見るなんてできないだろう。それどころか、私の周りも危ないわけで、美穂とも会えないかもしれない。
だから、だから...
考えるだけで頭が痛くなる。
何を言ってるのだろうか。私は西条だ。しかも女。こんなに感情を出していることすら本当は許されないのに。
それでも私は掟を破ろうとしている。
彼らと、彼女と、ずっと一緒にいたいって願ってる。
普通の家庭の子と同じ生活がしたいと願ってる。
いまさら無理な話なのに。