仮定
知られざる自分
──────……
……なんだろ…
あったかくて…
風が柔らかく頬を撫でて…
鳥の鳴き声が聞こえて……
そう…心地いいんだ、すごく。
「………ん………」
「!! おい!リオン様がお目覚めのようだぞ!!」
「えっ ほんとか!?」
「今声を上げられたぞ!!」
「それは本当ですか!?」
「リオン様…!」
「リオン様が!」
「ほら皆の衆、近う寄れ!」
………ん……?
何…?
なんかやけに騒がし───
「おおっ!!リオン様のお目が!!」
「「「リオン様!!!」」」
───い…………
………………
……………………え?
何、これ
「ほら、異世界の衣服を身につけておられるが、間違いなくリオン様だ!」
「この美しい漆黒の髪、深く吸い込まれそうな漆黒の中に輝きを持つ大きな瞳!!」
「透き通る様な白い肌!!」
「この誰をも魅了してしまう儚さ、美しさ……まごうことなき我らのリオン様!」
「お帰りなさいませ!!」
「お帰りなさいませ!!」
「……………。」
え?
一体なんなのですかこれは?
ドッキリ?
いやいや有名人でも何でもない私にそんなことは絶対にないはず。
でも、私が目にしたものはそう考えずにはいられないような、見慣れぬ異様な光景だった。
木々の緑がさわさわと風に揺れ、暖かく柔らかな陽が射し込む……そう、恐らくここは森。
私が座るお尻の下には、石造りの丸い大きな台座?のようなものがあり……
そしてその周りには、老若男女問わずたくさんの人々が集まり、私を見つめている。