仮定
その少年は私の元──台座の下──まで来ると、ひざまづき頭を下げた。
「リオン様…お久しぶりにございます。ずっと、ずっと、お待ちしておりました」
「え」
ずっと…?
そういえば…あの男の人も、ずっとって……
少年は顔を上げ、私に優しく微笑んだ。
「会いたかったです。すごく」
「……っ」
柔らかく、綺麗な笑顔。
美しい金色の瞳が三日月を描く。
……何でだろ…?
なんか、懐かしい……
「さあリオン様。お手を」
そう言いながら差し伸べられた手に、恐る恐る自分の手を重ねる。
「あ…ありがとう…」
「いいえ」
少年は、またクスッと微笑んだ。
「では、行きましょう」
少年に手を引かれ、人々の間を通り抜けていく。
人々は皆土下座のような体勢で頭を地面に着けながら、ひたすら私の名前を連呼する。
何かの宗教の様な…はたまた何かにとりつかれているような…
得体の知れない不気味さに、思わず身体が強張る。
「リオン様?大丈夫ですか?」
顔を上げると少年が心配そうに眉を下げ、振り返っていた。
あ……
手にも力、入ってたのかな…
「ご、ごめんなさい。だ…大丈夫です…」
「フフッ。謝る必要なんかないですよ。大丈夫なら良いんですが……」
少年は何か言いたげな顔をしたが、また微笑み続けた。
「とにかく今は休みましょう。リオン様のご体調が心配です」
「あ…、はい」
私、リオンじゃなくてリオなんだけどなぁ……
でも何だか言ってもあんまり意味なさそうだし…
あんまり変わらないし、まあいいかな…
そんなことを考えながらも、手を引かれ歩き続けた。