好きになった人、愛した人。
「いや、外出許可が下りるときもある。でも、出たくても帰ろうとは思わない」


「どうして?」


「迷惑がかかるから」


その言葉に、あたしはゆっくり振り向いた。


そこには、窓の外を眺める奈生の姿。


「迷惑?」


けれど、奈生はその言葉に返事をせず、あたしへ向けて手をのばした。
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