好きになった人、愛した人。
「親も兄貴も、俺の前じゃ泣かないし弱音もはかない。

兄貴なんてさ、俺のためにずっと我慢してんだぜ?

俺のために大切な玩具取り上げられたってさ、笑顔で『どうぞ』って……バカじゃん。

そんな事したって俺の病気よくなんねぇのにさ」


奈生の声が徐々に震え始め、次第に小さくなっていく。


あぁ……。


今泣きたいのは奈生も一緒なんだ。


あたしは、奈生の背中に自分の腕をまわした。


辛いよね、苦しいよね。


生きるのって、健常者でもそうじゃなくても、どうしてこんなに過酷なんだろうね。



少しくらい泣いたって、許されるよね――。

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