好きになった人、愛した人。
「『どうかした?』だって? チハヤ、お前わかってんだろ? 奈生がどういう状態なのか!?」


「先天性の心臓病で手術を繰り返してること?」


それが、なにか?


そう、表情に浮かべて矢原を見つめる。


その瞬間、今までの怒ったような表情は消え、一瞬にして苦痛にゆがんだ。


「チハヤ、お前はわかってない……」


「病気のことなら、わかってるわ」


「奈生と一緒にいるってことは、人生を捧げるってことだぞ? なに一つ、自由にはならない」


矢原の言葉に、あたしは昨日の奈生を思い出していた。


『誰が、俺の前で必死で我慢してんの見んの』
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