好きになった人、愛した人。
「なんでそんな事決めつけられなきゃいけないの!?」


感情が高ぶり、声が大きくなっていく。


この際、店員の目なんてどうでもよかった。


やはらは通勤用鞄から茶色い封筒を取り出して、テーブルの上に置いた。


「一か月分のバイト代。でも、もう病院へは来なくていいから」


奈生との手切れ金ってことか。


こんなもので、あの子の事を忘れろって?


そんなの、無理に決まってる。


席を立って会計を済ませる矢原に、あたしは封筒を突き返した。


「今までのバイト代だけもらっとく。あとは、また月末に渡して」
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