好きになった人、愛した人。
☆☆☆

放課後、あたしは病院へ向かった。


矢原の言葉は気になったけれど、それが原因で家庭教師をやめるつもりはなかった。


「おっす」


そう言ってノックもせずに病室へ入ると、「ノックくらいしろよ」と、いつものベッドの上で奈生がため息をついた。


窓からの太陽光でキラキラと輝く白い部屋。


その輝きの中の、奈生。


一瞬、奈生が輝きの中に吸い込まれていくような感覚に襲われ、身をこわばらせた。


「なにボーっと突っ立ってんの?」

< 116 / 395 >

この作品をシェア

pagetop