好きになった人、愛した人。
「あ、うん……。問題集、持ってきたから」


「見せて」


いつもの丸椅子に座り、問題集を取り出す。


奈生はまるで遊び道具を見つけた子供のように、問題を見つめる。


「ねぇ、勉強面白い?」


「まぁね」


「……絵を描くのと、どっちが好き?」


訊ねると、奈生は一瞬あたしを見て「両方」と、答えた。


「ごめんね。あたし絵の事全然わかんなくて」


「いいよ別に。あんたはお菓子でも作ってれば」
< 117 / 395 >

この作品をシェア

pagetop