好きになった人、愛した人。
すらすらと解かれる問題を見ながら、あたしの胸には切なさが込み上げてくる。


こんなに優秀なら、元々家庭教師なんて必要ないんじゃないの?


なんで、親の前であたしを褒めるの?


そして、少しだけ期待してしまう。


もしかして奈生はあたしと会うために、『優秀な家庭教師』という事を両親に話していたんじゃないだろうかと。


もし、そうなら……。


気持ちが通じるのであれば……。


寸前のところまで出かかった言葉を、あたしは噛み殺した。

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