好きになった人、愛した人。
あたしは叔母さんがDVDをやめて出てきてくれたのだと思い、振り向かずに


「最後まで見てればよかったのに」


と、声をかけた。


しかし、次の瞬間。


キッチンのテーブルに置いていた鞄がひっくり返される音がして振り向いた。


そこに立っていたのは叔母さんではなく、太一だったのだ。


太一が、またあたしの鞄の中から財布を取ろうとしている。


「なに、するのよ!」


あたしは今日もらったバイト代の事を思い出し、あわてて駆け寄った。


「あれだけじゃ足りねぇんだよ!」


「やめて! 初めての給料なんだから!!」
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