好きになった人、愛した人。
太一から財布を奪い返そうと手を伸ばす。


その肩を押され、あたしはバランスを崩してテーブルの角に頭を打った。


痛みで一瞬視界が真っ白になる。


その時だった。


「なに、してるの!!」


叔母さんのかなぎり声が聞こえてきて、あたしはハッと顔をあげた。


今の怒鳴り声で叔父さんも部屋を出てきてその後ろにいる。


あたしはなんとか立ち上がり、痛む頭を押さえた。


「チハヤ、大丈夫?」
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