好きになった人、愛した人。
そんなあたしの頬を太一は不意に殴ったのだ。


突然の事に目の前は真っ白になり、気が付けば部屋の入り口で倒れていた。


悲鳴をあげる暇もなく、馬乗りになって2発目が飛んできた。


太一は無言で、ただあたしを睨み付けている。


殴られる痛みよりも、恐怖の方が強かった。


目の前にいるのは、一体誰?


あたしの知っている太一じゃない。


太一の仮面をかぶった獣のように見えた。


何度も殴られるにつれ、意識が遠のいていく。

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