好きになった人、愛した人。
表示されているのは、今まで一度も電話をかけたことのない番号。


奈生の、番号。


そして、あたしは一度も躊躇することなく、発信ボタンを押していた。


寝ているに決まってる。


病室では電話できないはずだし。


なにやってるんだろうと、冷静な自分が笑う。


けれど、それは意外にも3コール目で聞きなれた奈生の声に切り替わった。


《もしもし?》


寝起きなのか、くぐもった声。


「も、もしもし」
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