好きになった人、愛した人。
《なんだよ。家庭教師が、こんな時間に何か用事?》


「あ、用事って……いうか……」


言い訳なんて考えていなかったあたしは、くちごもってしまう。


《なんだよ、用事ねぇのかよ》


「う、うん。ごめん」


《じゃぁ、切るぞ》


奈生が電話口でそう言った時、ドンっ! とドアを殴りつけるような音がして、あたしは小さく悲鳴を上げた。


《どうした?》


「あ……なんでもない」
< 149 / 395 >

この作品をシェア

pagetop