好きになった人、愛した人。
《なんでもなくねぇだろ? なに悲鳴あげてんだよ》


「ちょっと、物音がしてびっくりしただけ」


あははっと軽く笑ってごまかしてみる。


しかし、受話器から聞こえてきたのは真剣な奈生の声だった。


《こんな時間に電話かけてきといて、誤魔化してんじゃねぇぞ》


「ご、ごめん」


《なにがあった? チハヤ》



大人びたその口調に、あたしの心のトゲが一瞬にして包み込まれていく。


この子になら話してもいいかもって、思ってしまう。
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