好きになった人、愛した人。
太一が試験に落ちてから、叔父さんも叔母さんも太一を直視しなくなった。


様々な期待があたしへと注がれ、太一を差し置いて大学進学までさせてくれた。


実の息子を差し置いて、一体あたしはなにがしたいんだろう。


パティシエになる?


その夢を叶えたところで、一体どうなるというのだろう。


太一が、それで報われるとは思えなかった。


だって、あたしは太一の夢までも見下し、笑いものにしたことがあるから。


昔から物語が好きだった太一の夢は、童話作家になることだった。
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