好きになった人、愛した人。
「あ……おはよう」


咄嗟に、かすれた声でそう言った。


返事なんて、あるわけないのに。


太一は何も言わずにあたしの部屋に入り込み、机の上に出しっぱなしの財布を手に取った。


「ちょっと、いい加減にしてよ!」


1階の2人に聞こえないように小さな声で怒鳴る。


昨日みたにバレたら、また太一は部屋にこもってしまう。


最近頻繁に家の中で会うのは、いい兆候かもしれないと感じていた。
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