好きになった人、愛した人。
「ねぇ、もうやめようよ太一」


あたしは太一の背中にそっと触れた。


「昔の太一に戻ってよ……お願いだから」


沈黙が、重くのしかかる。


言いがたい不安に包まれて、今すぐ逃げ出したい衝動にかられる。


だけど、ここで逃げちゃダメだ。


奈生のことも、太一のことも。


全部、あたしの問題なんだ。
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