好きになった人、愛した人。
建物の外観の説明くらい聞いておけばよかった。


そう思って軽く唇をかんで、再びメモに視線を落とす。


すると、不意にその住所に見覚えがあることを思い出した。


「この、住所って……」


数年前、叔父さんが電気ドリルを使って発明品を作っているとき手元が狂い、ドリルの刃が叔父さんの足をかすった。


その時、たしか病院の電話番号を調べる時に電話帳でこの住所を見た気がする。


と、いうことは……。


あたしは、この街で一番大きな総合病院を見上げた。


民家に囲まれていてもわかる、その建物。
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