好きになった人、愛した人。
言い方は雑でも、奈生の口調は優しかった。


言いたくないから言わなくてもいい。


そんな意味がこめられた言葉だった。


「昨日のあれ、本当?」


「あれ?」


「お前が自分で言ったんだろ? 俺の事、好きって……」


奈生は照れたようにうつむいて、白い頬を赤く染めた。


あぁ。


あれ、ちゃんと聞こえてたんだ。
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