好きになった人、愛した人。
恋なんてしようと思ってできるものじゃない。


ある日突然落ちてしまうものなんだから、それは自分の力ではどうしようもない。


「これじゃ、玩具と一緒だ」


奈生の言葉にあたしは「え?」と、聞き返す。


「前に話したろ? 兄貴の玩具を俺が貰ってたって話」


「あたしは玩具ってこと?」


「そうじゃなくて、結局俺が兄貴の大切なものを奪っちまった」


クシュッと前髪をかきあげる奈生。
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