好きになった人、愛した人。
「なに言ってんの!?」


慌てて身を離そうとするあたしの手を、今度は奈生が握り締めた。


「考えたんだけどさ、お前も俺も、なにかと我慢してると思わねぇ?」


「え……?」


つきさっきまで似たようなことを公園で考えていたため、ドキッとする。


「俺は病気で、お前は家庭環境で。そのうえ、好きな相手にまで遠慮すんの?」


「……奈生は、あたしのこと、好き?」


「好きでもない女のヌード、描きたいと思うかよ」
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