好きになった人、愛した人。
そう言っていやらしく笑う奈生は、さっきまでの可愛さを完全に放棄している。


強く握られる手。


通じ合った想いに我慢なんて必要ない。


でも、あたしの脳裏には矢原から言われた『甘くない』という言葉が染み付いていて、なかなか奈生に甘えることができなかった。


「あたし、奈生のためにできることって、ほとんどないよ?」


「誰がお前に期待してるって言った?」


「もし、恋人同士とかになってもさ……」

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