好きになった人、愛した人。
「デート、できない?」


そう聞かれ、あたしは強くクビをふった。


できないことがあるのはわかってる。


そういうことじゃくて……。


「もし、俺が死んだら?」


一瞬、心臓が真っ黒なモヤに包まれて鈍くはねた。


奈生は真っ直ぐあたしを見つめていて、そらさない。


その現実がいつ訪れるかわからないということを、奈生はしっかりと受け止めているんだ。

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