好きになった人、愛した人。
踏み込んでしまえば、そこから抜け出せないような気がした。


ざわざわと、本能が毛を逆立てている。


だけど、その扉を開けてみたいという好奇心も強かった。


1度だけ。


1度だけ、行ってみよう。


それでダメなら、もう行かなければいい。


矢原にお願いして断ってもらえば、二度と関わる事もなく終われるはずだ。


「よし」


あたしは覚悟を決め、病院へと歩き始めた。
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