好きになった人、愛した人。
そんなあたしの態度が、更に太一を追い詰めたんだ。


「俺も……殴ってごめん」


握った太一の手が、微かに握り返してくる。


その手は、確かにぬくもりで満ちていた。


「挫折したけど、やりたい事を諦めたワケじゃねぇから」


太一はそう言い、叔父さんと叔母さんを見つめる。


その目は濁りがなく、真っ直ぐだった。


「本気、なんだな?」
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