好きになった人、愛した人。
どうして……?


言おうとして、あたしは奈生の言葉を思い出した。


『嫌なんだよ俺。誰かが、俺の前で必死で我慢してんの見んの』


あぁそうか。


奈生の目には家族が必死で働いて、自分のために動いている姿が見えていたんだ。


無理してでも笑って、耐えて。


だから、少しでも負担を減らそうとして高校進学を自分から望まなかったんだ。


「玩具だってさ、俺がさんざん遊んで満足したってわかってから『僕もあれがほしい』って言ってたんだぜ?


んなの、誰に言われなくたってやるに決まってんじゃん。


だから、母親に『我慢してね』って言われるのが、たまらなく嫌だった」
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