好きになった人、愛した人。
迷う気持ちを抑えるように、あたしは自分の手を握りしめた。


ここまで来て何もせずに帰ると、明日になればまた気持ちが揺らぐかもしれない。


その気持ちから、あたしはの手が自然とドアをノックしていた。


「……誰?」


聞こえてきた奈生の声に一瞬で胸が熱くなる。


あぁ、やっぱりあたしはあの子の事が好きなのだと、再確認させられる。


込み上げてくる感情を表に出さないように注意しながら、あたしはゆっくりとドアを開いた。


暗がりの中、月明かりに照らされている白いベッドと、奈生の肌。


まるで、どこかえ消えてしまいそうな儚さがあり、急に不安になった。

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