好きになった人、愛した人。
「奈生……」


奈生の頬に透明でキラキラ光るものが伝って流れていた。


あたしはそっとベッドに近づき、かがんでその涙を指先で拭った。


「なんで、こんな時間に家庭教師が来てんだよ」


「ごめんね。なんか、いろいろ伝えたいことが溢れちゃって……。

泣いてたの?」


訊ねると、奈生は窓の外に視線をうつして「また、手術を受けるんだ」と、小さく言った。


「え?」


「今日の夕方決まった。どうせ、またダメだろうけど」


奈生はあたしから視線をそらしたまま、淡々と言葉を紡ぐ。
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