好きになった人、愛した人。
「なんで、やる前から諦めるの?」


「チハヤには、わかんねぇよ。何度も同じことを繰り返して、それでも全然よくならなくて。そんな気持ち、わかんねぇよ」


いつも生意気な口をきいているその姿が、今はやけに小さく見えた。


その姿が妙に痛々しくて、あたしは力いっぱい奈生の体を抱きしめていた。


このまま消えてしまいそうで、なんだかすごく不安だった。


「でも、それでも。今回はうまくいくかもしれないじゃない……」


希望を捨てちゃダメだよ。


奈生からすれば、口先だけの綺麗ごとと思われるかもしれない。
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