好きになった人、愛した人。
あたしはそう思い、ドアを開けた。


そして、言葉を失った。


個室の真っ白なベッドに座っている1人の少年。


16だと聞いていたが、その年齢よりもはるかに幼く見える顔立ち。


細い手足に、白い肌。


透明感のある存在とは裏腹に、大きく真っ黒な瞳があたしを捕らえた。


「あんたが、家庭教師?」


少年は声変わりの終わったテノール。


瞳と同じ黒い髪が、開いた窓からの風で揺れている。
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