好きになった人、愛した人。
「今度こそ、今度こそって、毎回思ってた。これが最後の手術にするんだって……。

でも俺、結局ここから出れなくてさ。ずっとベッドの上で暮らしててさ……」


奈生の声が、徐々に小さくかすれていく。


「でもそんな時、チハヤが来た」


「え?」


あたしは少し身を離し、奈生を見た。


奈生は涙で赤くなった目をこちらにむけて、あどけなさの残る笑顔を浮かべた。


「世界が、急に明るくなった。

勉強したって絵を描いたって、得ることができなかった初めての感情を知った」


「奈生……」
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