好きになった人、愛した人。
「あぁ。知ってるだろ、兄貴の足の傷」


やっぱり、奈生はあれが自分のせいだと思っている。


あれがあってから、奈生は自分から外出を願う事がなくなったのだ。


あたしはたまらなく胸が痛んで、奈生を強く抱きしめた。


奈生のせいじゃないのに。


矢原だって、恨んでいるわけじゃないのに。


でも、そこまではあたしの口からじゃ言えなかった。


これ以上は、あたしの踏み込んでいい場所じゃない。


だから、あたしはもう一度奈生にキスをした。


どうか、この兄弟の溝が埋まりますように。
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