好きになった人、愛した人。
そっと奈生の首筋にキスを落とすと「チハ……ヤ」と、戸惑った声が降ってきた。


見ると、顔を赤面させた奈生が視線を泳がせている。


「あ、ごめんなさい……あたしっ」


こんなところで、なに考えてるんだろう。


慌てて身を離そうとするあたしの体を、奈生が抱きしめて止めた。


「違う。そうじゃなくて……」


「え?」


「俺、キスまでしかしたことない」


奈生の言葉に、あたしは驚いて「うそ!?」と、おもわず声をあげた。
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