好きになった人、愛した人。
「バカ、避妊具つけなさいよ」


コツンっと頭を叩いて静止させると、奈生は「やっぱダメか」と、残念そうにつぶやいた。


「当たり前でしょ」


「俺の忘れ形見、残せるかと思ったのに」


スラッと出た言葉に、あたしは顔をゆがめた。


まるで死を予感しているかのような言葉だ。


「そんなことさせないわよ。絶対に」


溢れ出しそうになる涙をおしこめて、あたしは言った。
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